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軽減税率が適用された場合の新たな益税問題(終)

2016年5月2日
日記

 今回で、この新たな益税問題のお題はフィナーレを迎えます。

 もしこの会社に一体資産にかかる軽減税率が適用されるとどうなるでしょう。税抜販売価格は1万円を超えているので(12,000円)、適用される消費税率は10%。つまり、受け取るべき消費税は1,200円となります。一方「みなし支払消費税額」は960円(受け取った消費税1,200円×みなし仕入率80%)ですので、差引240円が税金の対象となります。前回計算した192円より48円高くなりました。税金が高くなって損した気分ですか?そのようなことはありません。

 それでは、原則的な計算方法で求めてみましょう。簡易課税制度と同様に受け取るべき消費税は1,200円となります。では、実際に支払った消費税額はいくらになるでしょう?この会社、仕入れる際には税抜9,600円で仕入れています。つまり、仕入時に適用される消費税率は8%ということになります。ということは9,600円×8%で768円を消費税相当額として実際に支払っていることになります。従って原則的な計算方法の場合は、1,200円-768円=432円が税金の対象になるのです。

 そうすると、簡易課税制度を適用すると税金の対象は240円、原則的な計算方法の場合は432円ですので、実はこの会社192円も簡易課税制度を適用した方が得する計算になります。そうです、これが益税問題です。

 消費税率が8%なら192円だったのに10%になったら432円なんて消費税率のUP率以上に税額が大きくなるのはおかしい、という声も聞こえてきそうですが、税金の対象となっている432円は、実際に預かるべき消費税と実際に支払うべき消費税の差額なので事業者に損得はありません。

 実は、この計算方法、実際に軽減税率が適用され消費税の申告計算を行う頃には改正されるかもしれません。その場合、8%で仕入れた商品を10%で販売した場合に対応する、新しい計算方法が提示されるでしょうから(そうしないと益税問題が解決できない)、もはや簡易課税制度のそもそもの趣旨が意味をなさなくなってしまうと考えられます。

いずれにせよ当面は、様々な特例が認められており改正状況に注視していく必要がありそうです。

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